2025.02.18

2024年11月27日開催「SIP/BRIDGEフォーラム」イベントレポート【前編】

2024年11月27日開催「SIP/BRIDGEフォーラム」イベントレポート【前編】

2024年11月27日(水)、東京で「SIP/BRIDGEフォーラム」が開催されました。リアルとオンラインのハイブリッド形式で行われ、総数745名(対面276名、オンライン469名)からお申し込みがあり、日本が目指す未来社会「Society 5.0」へ向けた新たな発見と繋がりの場となりました。

『「未来社会」を知る。繋がる。体現する。』をテーマに、SIP/BRIDGE両分野のプログラムディレクターの講演やパネルディスカッションを実施し、参加者と登壇者が意見交換を行うことができる交流の場も設けられ、リアル開催ならではの温度感のあるコミュニケーションがみられました。

本レポートはイベントの様子とあわせて、各プログラムディレクターの研究内容や研究動機、目指す社会像について前後編でお届けします。

開会挨拶、事業説明

イベント会場となった中央区日本橋にあるCOREDO室町テラスの室町三井ホール&カンファレンスに約300人の参加者が集った本フォーラム。SIP/BRIDGEを代表し篠原 弘道氏、南部 智一氏による開会の挨拶から始まり、その後SIP第3期の課題説明やBRIDGE施策についてそれぞれの責任者から説明講演が行われました。

各分野のプログラムディレクターの講演に多くの聴講者が集まり、日本が目指す未来社会「Society5.0」への期待を高めました。

各PDが目指す、社会像と現在地

スマートモビリティプラットフォームの構築
筑波大学 名誉教授 石田 東生

石田 東生氏
人に会ったり、働いたり、子育てをしたり、私たちが生きていくためにはモビリティの存在が必須です。しかし今、日本の移動手段は加速度的に衰退しています。地方ではバスや電車の路線が人手不足・コストの問題で廃線になり、都市部でも運転手の担い手不足が問題視されています。移動手段がなければ人は閉じこもってしまい、社会参画が困難になるでしょう。この現状を技術の力で変革し、誰もが安全・快適に移動できるモビリティプラットフォームを築くことが我々の使命です。人・モノだけでなく、これからはサービスも移動する時代。キッチンカーをはじめ、移動診療車や移動教室などがその一例です。モビリティプラットフォームを日本全国に行き渡らせるためには、技術革新だけでなくルール整備やビジネス慣習、そして社会的受容性が進んでいくことも重要です。「日本を今よりも良くしたい」との想いをモチベーションに、今できる課題解決に邁進しています。

スマートエネルギーマネジメントシステムの構築
岐阜大学高等研究院 特任教授/(一財)電力中央研究所 研究アドバイザー/東京科学大学  科学技術創成研究院 特任教授 浅野 浩志

浅野 浩志氏
世界的にカーボンニュートラルの達成が急務となっている中、誰もが安心・安全・便利に再生可能エネルギーを使いこなせる社会を作ることが私たちのミッションです。現状、日本のエネルギーの半分以上は石炭や石油、ガスなどの化石燃料を燃やした熱エネルギーに頼っていますが、化石燃料に変わる新たな熱源として合成燃料や水素、アンモニアなどの再生可能エネルギーが注目されています。これらのエネルギーを社会に浸透させるための課題の1つに、セクターカップリングがあります。セクターカップリングとは、異なる部門(セクター)を統合し、エネルギーを融通しあうことを言います。例えば、電気バスを走行させるためには、効率的なエネルギー供給のためにバス会社と電力会社の協働が必要です。分野を横断して再生可能エネルギーを活用し合うマネジメントシステムを構築することで、脱炭素社会を早期に実現する。その一端に貢献できることが、最大のモチベーションです。

金融/投資機関による自然関連情報開示促進と国際標準化を前提としたネイチャーフットプリントの開発と実証事業
早稲田大学 理工学術院 創造理工学部環境資源工学科 教授 伊坪 徳宏

伊坪 徳宏氏
環境問題の要因の1つとして、人間の経済活動が負荷をかけていることが挙げられています。昨今、環境配慮を重視する投資家も増え、企業は環境負荷の削減努力やその開示を求められるようになりました。そこで我々は、自然資本に注目したライフサイクルアセスメント(LCA)の一種「ネイチャーフットプリント」の開発をしています。例えば、生物多様性は気候変動や水消費、土地利用など複合的な要因が絡み合うため、これまで共通した評価基準がありませんでした。科学的な観点を持つ信頼性の高い指標ができれば、企業はバリューチェーンにおける環境負荷の少ない製品の販売促進ができますし、金融機関は環境配慮を行っている企業を見極め優先的に投資することが可能になります。これはすでに実証段階にあり、今の評価基準を企業に使ってもらいフィードバックをもらうことで、精度や利便性を高めています。研究者・ビジネスマン・学生など多様な方々とのコミュニケーションを交え、世界共通の指標開発を進めています。

<文・田邉 なつほ/写真・曽川 拓哉>

内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み

科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。