施策テーマ AI農業社会実装プロジェクト
プログラムディレクター

寺島 一男
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 シニア・フェロー
経歴
1979年京都大学農学研究科修士課程卒。農学博士。農研機構中央農業総合研究センター所長、本部研究推進担当理事を経て、農研機構シニア・フェロー。内閣府SIPⅠ「次世代農林水産業創造技術(生産システム)」、SIPⅡ「スマートバイオ産業・農業基盤技術(スマート生産システムの開発)」研究責任者、PRISM「病害虫診断AI技術開発」、BRIDGE「AI農業」PD。スマート農業の技術開発と普及に貢献。
経歴
1979年京都大学農学研究科修士課程卒。農学博士。農研機構中央農業総合研究センター所長、本部研究推進担当理事を経て、農研機構シニア・フェロー。内閣府SIPⅠ「次世代農林水産業創造技術(生産システム)」、SIPⅡ「スマートバイオ産業・農業基盤技術(スマート生産システムの開発)」研究責任者、PRISM「病害虫診断AI技術開発」、BRIDGE「AI農業」PD。スマート農業の技術開発と普及に貢献。
施策について
目指す社会の姿:独自性を活かした生産性の高い地域農業が実現した社会
現在、日本の農業には様々な問題が存在しています。具体的には、深刻な労働力不足や、気候変動による農作物の収量・品質の不安定化、緊迫した社会情勢を背景とした生産資材の高騰が発生しています。このような中で農業の生産性を向上させるためには、作物の生育や収量の高精度な予測、新規就農者にも役立つ情報提供と適切な管理手法の提案など、AIを活用した新技術の導入が非常に重要となっています。
しかし、農業には各地域の自然環境や社会的条件が大きく影響を及ぼすため、新技術の導入は、そうした地域の独自性に配慮した形で進めていく必要があります。
そこで、私たちは、各地域の品種や栽培方法に関わるデータを活用した高精度なAIモデルの開発を進め、地域の独自性を活かしつつ生産性の高い国内農業の実現に貢献したいと考えています。

私たちのミッション
全国で収集した農業関連データベースに基づき統一的な基本AIモデルを構築するとともに、地域の農業コミュニティーとの連携で改良(ファインチューニング)を加え、栽培技術の高度化に役立つ地域特化型AIモデルを開発・提供することが、私たちのミッションです。


キーワード:ファインチューニング
AIモデルを一から開発する場合、大量のデータが必要です。これは農業関連のAIモデルを開発するときも例外ではありません。しかし、地域特性を考慮するために個別の地域や産地で開発を行おうとすると、所有しているデータ数に限りがあるため、どうしても少数のデータしか集まらないことになります。
この問題については、我々が採り入れているファインチューニング手法を用いることで対処することが可能です。
この手法では、まず、農研機構等が保有する、農業に関する大量の基礎的知識ベースを全国規模で収集し、全国対応の基本AIモデルの開発を行います。そして、その基本AIモデルを、地方の試験研究機関やJA等が保有しているデータを用いて改良(ファインチューニング)していくことで、地域単位では少ないデータ数しか確保できない場合であっても、比較的高精度な地域特化版AIモデルを開発することができるのです。下図に普及指導の生成AIモデルの例を示します。
実際にファインチューニング手法を用いると、一からAIモデルを開発する場合の30分の1のデータ数で済むという報告もあり、大変効果的な手法だと認識しています。
私たちは、こうしたファインチューニング手法の活用を通じて、地域農業の生産性向上に貢献します。

本課題の直近の成果・ユースケース
ファインチューニング手法を用いた開発実施の第1弾として、三重県でイチゴを対象とした生成AIを構築しました。この生成AIを用いて、農業者から普及指導員に頻繁に質問される項目に対する回答を出力させたところ、回答の正答率が、汎用的生成AIより約40%高くなるという試験結果が示されました。ほかの地域でもこうした取り組みを希望する声がいくつか上がっており、今後、適用地域・作目の拡大を図っていきたいと考えています。
読者へのメッセージ
AIを活用した地域農業の成長を実現するためには、様々なステークホルダーの皆さんとの連携が重要です。
農業や地域振興に関心のあるICT企業や地域スタートアップ企業がいらっしゃいましたら、ぜひ一緒に、本課題に取り組みませんか?ご連絡をお待ちしています。
また、地方行政や普及機関、JAの皆様におかれては、ぜひ本課題に関心をお寄せください。AI開発に活用可能なデータプラットフォームやデータベースの構築に取り組んでいただくとともに、私たちが開発したツールを地域農業の生産性向上に活用していただければと思います。
記事作成時期2025年3月3日
(記事の内容は作成時時点のものです)
内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み
科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。