施策テーマ 革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化

プログラムディレクター

プロフィール写真:小松 利光

小松 利光

九州大学名誉教授/(公益財団法人) 筑後川水源地域対策基金 理事長

経歴

1975年 九州大学大学院博士課程 単位取得満期退学。九州大学工学部 助手、助教授、米国IOWA大学水理研究所訪問助教授を2度経て、九州大学工学部 教授、特命教授、名誉教授。日本学術会議会員、日本工学会副会長、WFEO(世界工学団体連盟)副会長、内閣府BRIDGE 『革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化』 PD, 環境省 環境研究総合推進費 S-8『亜熱帯化先進地九州における水・土砂災害適応策の研究』研究代表者。

経歴

1975年 九州大学大学院博士課程 単位取得満期退学。九州大学工学部 助手、助教授、米国IOWA大学水理研究所訪問助教授を2度経て、九州大学工学部 教授、特命教授、名誉教授。日本学術会議会員、日本工学会副会長、WFEO(世界工学団体連盟)副会長、内閣府BRIDGE 『革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化』 PD, 環境省 環境研究総合推進費 S-8『亜熱帯化先進地九州における水・土砂災害適応策の研究』研究代表者。

施策について

目指す社会の姿:高精度の洪水予測により、全ての人が安全・安心に住むことのできる社会の実現

現在、地球温暖化の進展に伴って、日本近海の海水温が急激に上昇しています。これによって日本に流れ込む水蒸気と熱が非常に多くなっており、日本での集中豪雨の強さも発生数も大幅に増加しています。このように、日本での災害外力(災害を引き起こす力)がどんどん高まっている一方で、防災対策が追い付いていないという現状があります。
そこで私たちは、少しでも効率的に防災対策を行うべく、日本の先進的な観測技術を活用して、防災対策の基本となる予測予報の精度を向上させたいと考えています。正確な予測予報で災害発生時の被害を最小限に抑えることで、安全かつ安心な社会の実現を目指します。

施策テーマ「革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化」について語る小松 利光さん

私たちのミッション

日本の先進的な観測技術を活用して統合気象データベースを構築するとともに、そのデータを活用したAIによる洪水予測技術を開発・実装することが、私たちのミッションです。

施策テーマ「革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化」について語る小松 利光さん

キーワード:ライダーセンシング技術

洪水を引き起こす豪雨の発生に最も直接的に関与する要因は、河川の流域へ流入する水蒸気と熱の流れ込み(フラックス)です。したがって、豪雨の降水量の予測精度を向上させるためには、対象流域の風上側で、大気中の水蒸気と熱のフラックスをモニタリングすることが極めて重要になります。 このモニタリングを持続的に行うことのできる技術として、「ライダーセンシング技術」が世界に先駆けて日本で開発されました。それが、上空の水蒸気・気温の鉛直分布をリアルタイムで観測できる、水蒸気・気温ライダー(ラマンライダー)です。私たちは、この水蒸気・気温ライダーと、風速・風向の鉛直分布を観測できる風ライダー(ドップラーライダー)の2種類のライダーから取得した気象データを用いて、洪水予測への有用性の検証を進めています。 また、ライダーのデータに加え、気象衛星が観測した平面的拡がりをもつ気象データも導入します。気象衛星のデータをライダーデータと組み合わせることによって、統合データの有効性をライダー設置地点だけでなくその周辺まで平面的に拡げることが可能となり、風下側のより広範囲にわたって、早期かつ正確な予測ができるようになります。

本課題の直近の成果・ユースケース

豪雨が非常に多い九州の球磨川・川内川流域において、前述の「ラマンライダー」と「ドップラーライダー」から得られたデータが気象予測に効果的であることを実証できました。
実際にライダーを用いて収集した水蒸気や熱のデータを使ってコンピューターシミュレーションで同化実験を行ったところ、気象予測精度が大幅に向上しました。

読者へのメッセージ

防災は、人の命にかかわる極めて重要な分野です。災害による物理的損失は、復興に繋げることが可能ですが、人の命が失われたらもう取返しがつきません。
人命の損失を何としてでも回避するためには、行政・住民・研究機関が一丸となって予防措置を講じることが重要です。
私たちは、これからも予測技術を改良し、災害の予報精度を向上させるよう取組みを進めてまいります。住民の皆様も、個人の判断はできるだけ避けて行政の指示を尊重することで、自分の命、そして大切な人の命をぜひ守っていただきたいと考えています。

記事作成時期2025年3月11日
(記事の内容は作成時時点のものです)

内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み

科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。