施策テーマ 金融/投資機関による自然関連情報開示促進と国際標準化を前提としたネイチャーフットプリントの開発と実証事業

プログラムディレクター

プロフィール写真:伊坪 徳宏

伊坪 徳宏

早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 環境資源工学科 教授

経歴

東京大学工学系研究科材料学専攻修了、博士(工学)。
社団法人産業環境管理協会において経済産業省LCA国家プロジェクトにおいてライフサイクル影響評価手法を開発。独立行政法人産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センターにおいて環境影響評価手法LIMEの開発と産業界への応用研究に従事。
東京都市大学環境学部教授、総合研究所環境影響評価手法研究センター長、環境情報学研究科長などを歴任。2023年から現職。

経歴

東京大学工学系研究科材料学専攻修了、博士(工学)。
社団法人産業環境管理協会において経済産業省LCA国家プロジェクトにおいてライフサイクル影響評価手法を開発。独立行政法人産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センターにおいて環境影響評価手法LIMEの開発と産業界への応用研究に従事。
東京都市大学環境学部教授、総合研究所環境影響評価手法研究センター長、環境情報学研究科長などを歴任。2023年から現職。

施策について

目指す社会の姿:ネイチャーフットプリントを活用した投資・産業活動の促進により、ネイチャーポジティブが実現された社会

現在、グローバル企業は気候変動だけではなく、自然資本に対する新たな情報開示への対応にも迫られています。我々は、この新たな情報開示への対応は「ピンチでもありチャンスでもある」と考えています。つまり、国内企業による情報開示を容易にし、自社の優位性をアピール可能な国際標準のルールメイキングができれば、国内企業の産業競争力を強化することも可能ということです。
そこで本BRIDGE施策では、企業活動の環境への影響を、自然資本に注目して定量的に評価するネイチャーフットプリント(NF)を開発・活用し、それを国際標準化することを目標としています。さらに金融/投資機関と協力し、開発したNFを用いてESG投資/インパクト投資を行ってもらうことで、企業の情報開示や民間の投資を喚起し、社会全体としてネイチャーポジティブが実現された社会を創ることを目指しています。

施策テーマ「金融/投資機関による自然関連情報開示促進と国際標準化を前提としたネイチャーフットプリントの開発と実証事業」について語る伊坪 徳宏さん

私たちのミッション

私たちのミッションは、自然資本・生物多様性に注目した環境への影響を評価するネイチャーフットプリント手法を開発し、国際標準化を行うことです。過去の規格の知見を生かしてより短い期間での標準化を進め、2030年を目標に国際規格として発行することを目指しています。

施策テーマ「金融/投資機関による自然関連情報開示促進と国際標準化を前提としたネイチャーフットプリントの開発と実証事業」について語る伊坪 徳宏さん

キーワード:生物多様性フットプリント(質)と生態系サービスフットプリント(量)

ネイチャーフットプリント(NF)の開発では、「生物多様性フットプリント」という「質」の視点と「生態系サービスフットプリント」という「量」の視点から自然を評価することを目指しています。まず生物多様性フットプリント(質)に関しては企業が影響を与える生物の多様性について注目します。これまでのLCA(ライフサイクルアセスメント)研究では、陸域の生物多様性に注目した分析が中心でしたが、今回の生物多様性フットプリントの評価手法では陸域に加えて水域の生物多様性も考慮しています。次に生態系サービスフットプリント(量)に関しては、農地で採れる作物などの供給サービス、気候変動や災害に対しての調整サービス、観光資源としての側面を持つサンゴ礁などの文化的サービスに注目し、その生態系が持つ経済的価値を算出しています。生態系サービスの評価はLCAではほとんど進んでいなかったため、今回のプロジェクトで新たな評価手法を構築しています。
最終的には、これらの結果を統合した評価を経済指標として表現し、各企業のKPIとして利用価値が高い指標をNFとして作成します。

本課題の直近の成果・ユースケース

生態系に関する情報開示では、地域性を考慮することが重要です。例えば、水の偏在性や生態系の豊かさは地域ごとに異なるため、企業の生態系に関する活動を評価する際には、このような地域性の違いを反映することが求められています。私たちはこのニーズに応え、LCA(ライフサイクルアセスメント)に地域性を考慮した評価係数リストを作成しました。従来のLCAでは国単位の評価が主流でしたが、私たちは約25キロ四方を単位とする細かい地域レベルでの評価係数を提供することで、より実情に即した分析を可能にし、地域ごとの生態系への影響をより正確に把握できるようになりました。

読者へのメッセージ

今回のプロジェクトでは、ネイチャーフットプリントの評価手法の開発から活用、そして国際標準化を目指しています。
我々の評価手法を活用することによって水や土地などの自然資本に注目した新たなライフサイクルの評価ができるようになります。そうすると、水資源の節約や負荷の少ない開発といった各企業の取り組みを、企業の強みとして世界に発信ができるようになります。ぜひ積極的なご利用とご意見をお寄せいただければ幸いです。

記事作成時期2025年3月3日
(記事の内容は作成時時点のものです)

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