課題テーマ 統合型ヘルスケアシステムの構築
プログラムディレクター
永井 良三
自治医科大学学長、東京大学名誉教授、宮内庁皇室医務主管
経歴
1974年東京大学医学部卒業、医学博士。専門は循環器病学。東京大学医学部附属病院第三内科助教授などを経て、1999年東京大学大学院医学系研究科内科学専攻循環器内科教授、2003年東京大学医学部附属病院病院長、2009年東京大学トランスレーショナルリサーチ機構長を歴任。2012年自治医科大学学長、東京大学名誉教授に就任。2009年紫綬褒章、2012年ヨーロッパ心臓病学会GoldMedalなど受章。
経歴
1974年東京大学医学部卒業、医学博士。専門は循環器病学。東京大学医学部附属病院第三内科助教授などを経て、1999年東京大学大学院医学系研究科内科学専攻循環器内科教授、2003年東京大学医学部附属病院病院長、2009年東京大学トランスレーショナルリサーチ機構長を歴任。2012年自治医科大学学長、東京大学名誉教授に就任。2009年紫綬褒章、2012年ヨーロッパ心臓病学会GoldMedalなど受章。
課題について
様々な健康医療情報を活用することで、一人一人の個人が
自らの健康状態について理解し、自立的に考え行動することのできる社会
いま、病院や製薬の現場だけでなく、ウェアラブル端末の普及等により個人の生活の中でも様々なデータが取得できるようになりました。しかし、情報は溢れているものの、「何が実態なのか?」ということは意外と分からないものです。これからは、医療者や研究者など専門職の方々だけでなく、国民一人一人が、病院で受ける指導や治療について「本当に意味があるのか?効果があるのか?」と様々に統合されたデータを基にして自立的に考え、行動できる社会になることが大事だと考えています。
また医療現場の逼迫も重要な課題です。私たちが目指す社会では、蓄積された医療健康情報を基に、医療者が目の前の問題に対してどのように取り組んだらいいのか、他の病院ではどうしているのか、様々な情報を参考にしながらより迅速に個別の判断ができるようになります。私たちが目指すのは、医療版のSociety 5.0と言うことができます。
私たちのミッション
医療版Society 5.0を実現し、医療、ヘルスケア、研究開発、医療政策のそれぞれの現場で、実態を可視化し、新たな気づきに基づいて複雑な医療健康システムを制御することが私たちのミッションです。その核となるのは医療デジタルツインの実現です。
医療デジタルツイン
デジタルツインとは、「現実世界(物理空間)の情報をデジタル化し、仮想空間(デジタル空間)上に再現したモデル」を指します。これを基に現実に近いシミュレーションを行い、実際の社会にフィードバックを行います。
医療デジタルツインは、①新たな知識の発見、②医療現場・患者さんの支援、③地域医療の3つの目的のために構築を行っていきます。
コロナのパンデミックの中で、日本の情報集積体制が非常に弱いということが明らかになりました。
例えば、現在中核的な病院で普及し始めている電子カルテは、病院やベンダーによって全くバラバラの情報が集められており、病院間での医療情報の統合や活用も難しい状態にあります。私たちはこのような現状の課題に対応すべく、医療デジタルツインの実装、医療データの標準化・統合による統合型ヘルスケアシステムを構築していきます。
実証中/実証予定のユースケース
現在、病院間の医療情報を統合していくために、10か所以上の大学病院やナショナルセンターの電子カルテを繋いでいくプロジェクトを進めています。また、病院にある情報だけでなく、個人健康情報(PHR:パーソナルヘルスレコード)と医療情報を統合し、病院にいない間の情報も一元管理できるシステムの開発というのも進めています。この、様々な情報を統合していくというのはそこまで高度な技術が求められるわけではありません。ただし非常に時間がかかる泥臭い地道な仕事です。しかしそういう地道なことを続けていくことが重要なのです。
社会実装という意味では産業界との協働も非常に重要です。医薬品・医療機器メーカーと協働し、医療データとPHRを活用した、医薬品・医療機器の有効性評価と課題抽出のためのフィードバックを行うプロジェクトも進行中です。
協働したいステークホルダー
医療というのはある意味社会の縮図ですので、そこで研究しようと思うと社会のあらゆる方々と連携をしていかないと、前に進んでいくことができません。
医療者、国・自治体、医薬品・医療機器メーカー、データを扱うIT分野の方々は不可欠ですし、法律や倫理の領域の方々とも連携して問題を解決していきたいと考えています。
記事作成時期2024年1月31日
(記事の内容は作成時時点のものです)
内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み
科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。