課題テーマ 豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築

プログラムディレクター

プロフィール写真:松本 英三

松本 英三

株式会社J-オイルミルズ 取締役常務執行役員 CTO

経歴

1986年 4月 味の素株式会社入社
2011年 7月 同社 バイオファイン研究所プロセス工業化研究室長
2015年 4月 内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)
2017年 6月 株式会社J-オイルミルズ 取締役(現任)
2017年 6月 同社 常務執行役員(現任)
2018年 7月 同社 生産・技術開発管掌
2023年 7月 同社 CTO(現任)
2023年よりSIP第3期プログラムディレクター

経歴

1986年 4月 味の素株式会社入社
2011年 7月 同社 バイオファイン研究所プロセス工業化研究室長
2015年 4月 内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)
2017年 6月 株式会社J-オイルミルズ 取締役(現任)
2017年 6月 同社 常務執行役員(現任)
2018年 7月 同社 生産・技術開発管掌
2023年 7月 同社 CTO(現任)
2023年よりSIP第3期プログラムディレクター

課題について

目指す社会の姿:国内全体で食の安全安心が担保され、皆が日々の活力ある生活につながる食事を摂取できている社会

日本国内では、これまで、世界各地から食料や肥料の多くを輸入するというグローバルフードチェーンの構築が進められてきました。しかし、近年、世界全体の気候変動による農作物の高騰や、ロシアのウクライナ侵攻による肥料の高騰・小麦不足といった地政学リスクが顕在化しており、グローバルフードチェーンの脆弱性が問題となっています。
また、食の二極化が進む現代では、塩分・脂質・糖分を過剰に摂取してしまうなど、健全な食習慣を持たない消費者が増加しており、健康維持・増進のリスクが拡大しているという問題も生じています。
私たちは、このような課題が解決された社会、つまり、国内全体で食の安全・安心が担保され、皆が日々の活力ある生活につながる食事を摂取できている社会を“豊かな食”と定義し、その実現を目指して本課題の取組みを進めています。

課題テーマ「豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築」について語る松本 英三さん

私たちのミッション

健康に貢献する豊かな農林水産物の「国産国消」を最大化するとともに、環境負荷が低減された持続可能なフードチェーンを国内に再構築することが私たちのミッションです。

課題テーマ「豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築」について語る松本 英三さん

キーワード:次世代養殖システム

国内の一次産業では従事者の高齢化が進んでおり、持続的な国内フードチェーンの構築という観点からも、労働負荷の軽減や生産性向上が課題となっています。
この課題に対処するための一つの取組みとして、私たちは「次世代養殖システム」の構築を進めています。
この「次世代養殖システム」では、ICTやAIを活用した、新しい沖合養殖業の実現を目指しています。具体的には、海岸から3~5キロメートル離れた沖合に浮沈式の生簀を設置し、その中で、①沖合まで自動的に飼料を輸送する長距離搬送技術、②沖合での魚の健康状態を遠隔監視・分析して適切な給餌操作を実施する飼育管理システムを組み合わせた生簀養殖を行います。これによって、現在の技術では労働負荷が高い沖合海域の養殖を省力化し、さらに高精度化することが可能となります。
それだけではなく、ソナーやカメラを用いた魚の遠隔監視システムによって海洋環境のモニタリングも可能となり、赤潮や台風等の漁獲量減少に繋がる事象を事前に回避することができるため、安定した食の供給にもつながります。
このように、「次世代養殖システム」では、持続可能なフードチェーンの構築や食料安全保障の強化に貢献することが期待されています。

直近の成果・ユースケース

上記「次世代養殖システム」の構築に向けたユースケースとして、飼料の長距離搬送技術の開発が進められています。
このシステムで魚の養殖が行われる生簀は、海岸から離れた沖合に沈下しています。
そのため、自動給餌を実現するためには、パイプラインを用いて陸上から遠く離れた沖合まで飼料を搬送する技術と、搬送先の沖合で水中の生簀に自動的に給餌を行う技術が必要になります。
これらの技術のうち1つ目の長距離搬送技術の実現に向けて、現在、まずは陸上における長距離搬送実験を繰り返し行っているところです。

読者へのメッセージ

持続可能で安全な食の提供には、多様なステークホルダーとの協働が不可欠です。
大学や研究機関とは、連携して革新的な技術開発を行い、食品関連企業とは、協力して実用化を推進しています。また、政府機関とは、持続開発な食のシステム普及に向けた制度整備を共に行い、消費者や環境保護団体とも、倫理的かつ環境に配慮した食の提供に向けて対話を進めます。
本課題の取組みに興味がある方、賛同される方がいらっしゃいましたら、課題WEBサイト等の連絡先にご連絡ください。ぜひ私たちと一緒に活動しましょう。

記事作成時期2025年2月3日
(記事の内容は作成時時点のものです)

内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み

科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。