課題テーマ スマート防災ネットワークの構築
プログラムディレクター

楠 浩一
地震研究所 災害科学系研究部門・部門長 教授
経歴
1997年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。東京大学生産技術研究所助手、国土交通省建築研究所研究員を経て、2000年に同主任研究員に就任。2006年に横浜国立大学大学院に異動、工学研究院准教授となる。
2014年より東京大学地震研究所災害科学系研究部門 准教授、2018年 同教授になり現在に至る。2023年よりSIP第3期プログラムディレクター。
主な研究テーマは、構造物ヘルスモニタリング、RC構造の耐震性能、地震被害調査など。
経歴
1997年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。東京大学生産技術研究所助手、国土交通省建築研究所研究員を経て、2000年に同主任研究員に就任。2006年に横浜国立大学大学院に異動、工学研究院准教授となる。2014年より東京大学地震研究所災害科学系研究部門 准教授、2018年 同教授になり現在に至る。2023年よりSIP第3期プログラムディレクター。主な研究テーマは、構造物ヘルスモニタリング、RC構造の耐震性能、地震被害調査など。
課題について
目指す社会の姿:デジタル技術により災害による犠牲者をゼロにし、人々が普段通りの生活を続けられる安心・安全な社会
皆さんご存じの通り、日本は災害立国であり、地震や水害など多様な災害が発生しています。そのため、災害の被害を減らし、普段の生活を継続できる社会の構築は国として大きな目標の一つです。災害による被害を最小化するためには、それぞれの災害に合った対応が必要となります。例えば大きな地震の場合は即座に避難するため、迅速な避難所の運営が重要です。一方、水害の場合は災害前から状況が予測できるが故に避難に繋がりにくいため、危機感を持って実際に避難してもらうことが重要です。
私たちはデジタル技術を駆使した防災ネットワークを構築し、災害による犠牲者をゼロにすることを目指しています。同時に、迅速かつ正確な情報の提供および関係機関との連携を通して、災害が発生しても人々が安心して生活を続けられるような社会を実現すべく本課題に取り組んでいます。

私たちのミッション
DXやITの技術を用いて災害発生時に迅速かつ正確な情報を社会や人々に提供し、適切な行動の促進や被害の最小化を実現できるような新しい防災ネットワークを構築することが私たちのミッションです。


キーワード:防災デジタルツイン
デジタルツイン技術は、現実世界の状況をデジタル空間に再現する技術です。防災デジタルツインでは、デジタルデータを用いて大規模計算を行うことで、災害発生前の状況把握と災害発生後の状況予測を可能にし、災害時の迅速な対応を実現します。
災害発生前の都市の状況を再現するためには、効率的にデータを収集する技術も必要となります。例えば、橋や高速道路などのインフラをモデル化する際には、図面から自動的にデジタルデータを生成する技術が使われています。
モデル化するデータは多岐にわたり、ビルやマンションなどの建物の大きさ、素材、築年数といったデータや、普段人々がどこで暮らしていて、災害が起こった際にどの方向に避難するかといった人流データも活用されています。これらのデータを取り込んだ防災デジタルツインの構築により、災害時の被害予測や避難計画の策定がより精緻に行えるようになります。

直近の成果・ユースケース
本課題での直近の成果として、防災デジタルツインを用いた津波予測が挙げられます。デジタルツイン技術を利用すると、地震発生後わずか数分で津波がどの地域に押し寄せ、どの程度内陸まで到達するかを計算し、情報を提供することが可能になります。この予測技術は2024年1月1日の能登半島地震で実際に稼働し、観測された津波の状況とほぼ一致する結果を示しました。
また、災害立国として世界をリードするこのような技術は、国の基幹となる輸出項目の一つとしても挙げられています。このSIP課題で開発している技術も、地震国であるペルーや、津波が押し寄せる東南アジアの国々に対して輸出が可能となるよう、すでに検討を始めています。
読者へのメッセージ
災害発生時に、自宅の状況や企業活動の継続可否についての情報をいかに迅速に提供するかという点が、本課題のミッションです。その意味で、本課題は企業・行政・市民の方々など、幅広い方に関係のある取り組みです。
もし自分の家で、会社で災害が起こったらどうなるのか、そういった情報をどうやって手に入れるのか、ご興味がありましたらぜひ我々にご一報いただければと思います。
記事作成時期2025年2月3日
(記事の内容は作成時時点のものです)
第3期の課題一覧














内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み
科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。