課題テーマ バーチャルエコノミー拡大に向けた基盤技術・ルールの整備
プログラムディレクター
持丸 正明
国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 フェロー(人間拡張研究センター長兼務)
経歴
1993年、慶應義塾大学大学院博士課程生体医工学専攻修了。博士(工学)。同年、工業技術院生命工学工業技術研究所 入所。2001年、改組により、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボ 副ラボ長。2018年より、人間拡張研究センター長。2023年にフェロー。専門は人間工学、バイオメカニクス、サービス工学。現在、ISOTC 324および PC329国際議長。消費者安全調査委員会・委員長代理。
経歴
1993年、慶應義塾大学大学院博士課程生体医工学専攻修了。博士(工学)。同年、工業技術院生命工学工業技術研究所 入所。2001年、改組により、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボ 副ラボ長。2018年より、人間拡張研究センター長。2023年にフェロー。専門は人間工学、バイオメカニクス、サービス工学。現在、ISOTC 324および PC329国際議長。消費者安全調査委員会・委員長代理。
課題について
仮想空間を通じて、生産性の向上や地域課題の解決に取り組める社会
バーチャルエコノミーは、仮想空間(メタバース)を活用した新しい経済圏です。
このバーチャルエコノミーの研究課題では、仮想空間で価値を創出するだけではなく、仮想空間と現実空間を繋げ、現実空間に価値を還流することにフォーカスしています。例えば、バーチャル渋谷では、現実の渋谷にいる人々の行動をモニタリングして仮想空間を設計し、設計に基づいて現実空間(ユニバース)を立て直すことで、町の魅力度向上に取り組んでいます。
このように、私たちは、仮想空間をうまく活用しながら、生産性の向上や地域課題の解決に取り組める社会を目指しています。
私たちのミッション
技術開発だけでなく、基盤標準や戦略標準を整備することで、バーチャルエコノミーという新しい経済圏を構築・拡大させ、日本の産業競争力を向上させることが私たちのミッションです。
インターバースサービス
バーチャル渋谷のように、仮想空間の価値を現実空間に還流するサービスを、インターバースサービスと呼び、介護や健康、製造、観光など、様々な領域での展開が期待されています。しかし、インターバースサービスを社会実装するには、ルールや規格、評価尺度の国際標準化が必要です。
第一に、仮想空間におけるデータ連携やアバターの互換性、生体の安全性、中毒性への対処等を担保する基盤標準の整備に取り組んでいます。IEC(国際電気標準会議)やISO(国際標準化機構)で一部標準化の取り組みが始まっており、日本もメンバーとして関わっています。日本が貢献できたり、産業の強みを活かせたりする領域を取捨選択しながら、標準の整備を行っています。
第二に、インターバースサービスの評価尺度を決める、戦略標準の整備に取り組んでいます。スポーツで例えると、アンチドーピングルールが基盤標準で、競技ルールが戦略標準です。基盤標準に基づいて大会(基準品質が担保された市場)への出場可否が判断され、戦略標準に基づいて選手(事業)の順位が決まります。事業者がこの標準尺度で高い評価を得るのに役立つような、事業者向けのインターバースサービスを整えることができれば、それが導入・活用されていくことになります。
私たちは、基盤標準と戦略標準を組み合わせ、インターバースサービスの社会実装を実現し、バーチャルエコノミーを構築・拡大させ、日本の産業競争力を向上させたいと考えています。
実証中/実証予定のユースケース
SIP第3期では、インターバース技術のうち、触覚や味覚の伝送に注力していきたいと考えています。東京大学の篠田・牧野研究室では、離れたところから超音波で振動を与え、空中でモノを触っているかのような錯覚を皮膚に与える技術(空中ハプティクス)の研究開発が行われています。また、山形大学の古川研究室には、3Dプリンターで実際に食べられる寿司を”印刷”する技術があります。柔らかい素材を用いれば、味と見かけはそのままに、誤嚥リスクのある高齢者の方に料理を提供することも考えられます。
協働したいステークホルダー
バーチャルエコノミーの実現に向けて、独自技術を活用して新しい市場を開拓する、スタートアップの活躍に期待しています。
また、インターバース技術は、地方でより活きるものと考えているため、仮想空間を活用して地方創生に取り組む意向のある自治体や地方銀行、地元企業と連携をして、社会実装に取り組んでいきたいです。
記事作成時期2024年2月5日
(記事の内容は作成時時点のものです)
内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み
科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。