課題テーマ 先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進
プログラムディレクター

寒川 哲臣
日本電信電話株式会社 先端技術総合研究所 常務理事 基礎・先端研究プリンシパル
経歴
1986年東京大学工学部電子工学科卒業
1991年同博士課程修了(工学博士)、NTT基礎研究所入社
1999年ポールドルーデ研究所(独) 客員研究員
2013年NTT物性科学基礎研究所所長
2014年東京大学生産技術研究所光電子融合研究センタ客員教授
2018年NTT先端技術総合研究所所長
2022年NTT先端技術総合研究所 常務理事 基礎・先端研究プリンシパル
2023年よりSIP第3期プログラムディレクター
経歴
1986年東京大学工学部電子工学科卒業
1991年同博士課程修了(工学博士)、NTT基礎研究所入社
1999年ポールドルーデ研究所(独) 客員研究員
2013年NTT物性科学基礎研究所所長
2014年東京大学生産技術研究所光電子融合研究センタ客員教授
2018年NTT先端技術総合研究所所長
2022年NTT先端技術総合研究所 常務理事 基礎・先端研究プリンシパル
2023年よりSIP第3期プログラムディレクター
課題について
目指す社会の姿:量子技術によって「経済成長」「人と環境の調和」「心豊かな暮らし」が実現した社会

コロナ禍をきっかけとしたデジタル化の急速な進展により、サイバー空間と現実空間が高度に融合する「Society 5.0」への歩みが加速しています。「Society 5.0」では膨大なデータ通信量やセキュリティ確保への対応が求められるため、計算能力や秘匿性に優れた量子技術の重要性が増しています。
量子コンピュータは産業の生産性を高め、経済成長を促進します。また、リサイクル可能な新素材の開発、効率的なエネルギー供給を通じて人と環境の調和にも貢献します。さらに、量子暗号通信や量子センシング技術は、安全で安心な心豊かな暮らしを生み出す技術です。
私たちはこのような量子技術を利用することで、経済・環境・社会が調和した社会像を実現したいと考えています。


私たちのミッション
量子技術を社会の様々な分野で活用することで社会経済システムに取り込み、従来の技術と融合させることで産業の成長機会を創出することが本SIP課題のミッションです。

キーワード:量子コンピュータ
従来の古典コンピュータは「0」と「1」のいずれかの状態を取る古典ビットで情報を表していましたが、量子コンピュータでは「量子ビット」という単位を用います。この量子ビットは、量子力学の原理に基づき「0」と「1」の両方の状態を同時に取る「重ね合わせ」という性質を持ちます。この特性を活かすことで、量子コンピュータは複数の計算を同時に行い、特定の問題に対して非常に高速な計算が可能です。
しかしながら、量子ビットは外部環境の影響を受けやすく、微小な干渉でもエラーが発生するという課題があります。そのため、エラー訂正技術が重要となり、複数の物理的な量子ビットを組み合わせて論理的な量子ビットを構成する技術が用いられています。
量子コンピュータの商業化は2030年代に進むと予測されており、部分的なエラー訂正を行う「Early-FTQC」が2030年頃までに実現し、2040年頃には完全な誤り耐性を持つ量子コンピュータが登場すると見込まれています。製薬、材料科学、金融モデリング、物流最適化などの分野での活用が見込まれ、従来のコンピュータでは困難だった複雑な問題を解決することが期待されています。他にも創薬や医療、エネルギー、交通、工場運営など幅広い分野での応用が検討されており、量子コンピュータは、未来の技術革新を支える大きな可能性を秘めています。
本課題の直近の成果・ユースケース
SIP課題「豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築」との連携において、「量子」×「バイオ」のユースケースの検証を進めています。具体的には、量子コンピューティング技術を用いて、大豆の高収量と高品質を両立するためのタンパク質蓄積を制御する司令塔因子の特定を目指しています。我々「量子」課題の量子アルゴリズム技術に、「豊かな食」課題が持つ豊富なゲノムデータ解析の実績を組み合わせることで、ゲノムデータ解析から量子計算の適用まで一貫して取り組む体制を構築しています。この研究は、社会実装を目指すと同時に、量子計算性能の評価にも活用される予定です。
読者へのメッセージ
量子力学は約100年前に完成した学問ですが、現在活用されている分野は量子の可能性のほんの一部に過ぎません。量子技術は、その膨大なポテンシャルを最大限に引き出そうとする取り組みですが、まだ多くの課題が残されています。いずれ限界を迎えるデジタル社会がその壁を突破するためには量子の力が不可欠です。ぜひ多様なバックグラウンドを持つ人に興味を持ってほしいと願っています。
記事作成時期2025年3月3日
(記事の内容は作成時時点のものです)
第3期の課題一覧














内閣府の
科学技術・イノベーション
に関する取り組み
科学技術イノベーションこそが経済再生と持続的成長の原動力です。科学技術イノベーション政策を強力に推進し、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていくことが、今、必要とされています。激動する世界情勢や環境変化のなか、グローバル課題への貢献と国内の構造改⾰という両軸を、どのような政策で調和させることができるのか。日本が目指すより良い未来社会「Society 5.0」の実現に向けた新たなイノベーションへの発展に取り組んでいます。